2月3日
スマイラックス
― 我が勝利 ―
幼馴染として育った私たちは、近くに居すぎて、これが恋なのかなんなのかわかっていなかった。
ただ、一緒にいると楽しくて、小学校の頃は毎日一緒に登下校。
幼稚園の頃と違い、高学年になって数は少なくなったけれど私達は互いの家に泊まることもあった。
でも、ちょっとずつ歯車はずれていく。
幼馴染が小6の時に可愛いと評判の女の子からヴァレンタインのチョコを貰っていた。
それを見たとき、チクッと心が痛かった。
ずっと一緒だと思っていたのに、一番私が近いと思っていたのにと悔しくて、好きだった幼馴染を嫌いになった。
そして中学生になる。
相変わらず、私と奴は幼馴染で、ともに中等部進んだ。
テニス部に入った奴は瞬く間に学園内での人気者になった。
そんな奴とは違い、私は帰宅部。
当然幼馴染なんてものは単なる名前だけになり、クラスも違うので話もしない。
学園内ですれ違う時がたまに歩けど、奴の彼女がベッタリ引っ付いていたので声を掛ける気にもならなかった。胸が痛くて見ているのも辛かった。
奴に彼女の存在が消えることなくこの3年間が過ぎていった。
補足だが、この3年間まともに話していないし、挨拶さえもなかった。
それなのに。今この状況は・・・。
「あのー跡部君。」
「名前で呼べ。」
「あー…景吾君。」
「君付けも止めろ。気持ち悪い。」
なんて我が儘なんだ!この俺様男!って、俺様だから我が儘でいいのか…って!何を納得してるんだ私!
駄目に決まってるじゃん。それにこの体制はなに!
久しぶりに呼ばれて、来てみたら壁に押し付けられて身動き取れないんだよね…。
何がしたいんだろうこの人は。
「不細工な顔。」
「そりゃ、景吾には敵わないよ。」
「だろうな。」
「いや、威張るところじゃないし。それより、この状態は!一体なんの用で呼び出したのよ!」
学年一位の考えなんて万年馬鹿の私にはわかるわけないので聞いてみる。
すると奴は生意気そうな顔をして言いやがった。
「俺の女になれ。」
「は?」
「いいだろ、どうせ独り者だろ?」
「それは…。」
それはそうだけど。なんか、こうやって改めて言われると腹が立つ。
「お前は一生、男なんて出来ないから俺が貰ってやるって言っているんだ。」
カチン!あぁ、なんなんだこの男。私の中の何かが澄み切った音を奏でる。
「い・や。彼氏はいなくても、好きな人いるもの。」
「誰だ?」
「だ、誰でも良いじゃない!」
「ふーん。」
じろりと見られて焦る。嘘だってばれたかも…でも、そんなことは杞憂でしかなかった。
パッと私の手を離し、解放される。
息をついて、出て行こうとしたとき名を呼ばれて唇に暖かいものが触れる。
「好きな奴って俺だろう?」
「な、に・・・な、なにするのよ!」
「キス。」
「最低!」
「俺がモテて嫌だっただろう?」
「・・・。」
「他の女がいると嫌じゃなかったのか?」
「・・・痛かった。」
「は?」
「嫌じゃなかったけど、痛かった。」
「嫉妬したんだろう。」
「した。かもしれない。」
あぁ、あれは嫉妬だったんだ。
私は景吾が好きで、景吾が他の人のものになったのが嫌だったんだ。
あぁ、そっか。
こんなにも私は景吾が好きだったのか。
わかったら、すんなりと受け入れられて私は景吾の彼女になった。
(つまり、景吾は前から私のことが好きで、私が景吾のこと好きだって分かってたんでしょ?)
(あぁ、当たり前だな。)
(なんで他の人と付き合ったりしたのよ。)
(ハッ、俺様が意識さえしていない女に告白すると思うか?)
(・・・思いません。)((あぁ、景吾にしてやられたってことね。))
でもアイツから見れば我が勝利。
あとがき
テニプリを久しぶりに書いてみた。リハビリみたいなものです。