2月4日
リューココリネ
― 温かい心 ―
信じられなかった。
どいつもこいつも私の顔を見てはヘコヘコと頭を下げる。その表情は決まって笑顔。
あぁ!気持ち悪い!
この人たちは私には何の用もない。
そのくせに近づいてくるのは私が『』の姓を持っているからだ。
冗談じゃない。
そんな人は私の気も知らず、入れ代わり立ち代わり様子伺いに来る。
その結果私は他人を信じることが出来なくなっていた。
「なにやってるんだ。」
「息してる。」
「…馬鹿にしてるのか。」
「別に。」
だれもいない屋上でボーっとしていると鍵を掛けたはずの扉からこの男が入ってきた。
その男の楽しそうな表情。
この男、鳳鏡夜が今のように話しかけることは滅多にない。
この男もまた、私と同じような境遇に陥っているからだ。
そんな奴に私は少なからず心を開いていた。
「お嬢様たちの相手はいいのか。」
「環が頑張っているさ。」
「他人任せかよ!」
「あぁ。十分今月のノルマは果たしたからな。」
「あー…そうですか。」
そうだそうだ。思い出した。
コイツは道楽ホスト部の裏宰相。そのくらいのデータ改ざんはお茶の子さいさいだ。
「そんな悪い手は使ってないさ。」
「心を読むな!心を!」
まったく、何て奴だと思いつつ。胸の中が温かくなるのを感じる。
この金持ち学校で唯一素を曝け出せる場所だからだろう。いや、学校だけではない。世界中のなかで唯一の場所かもしれない。
「昨日まで頑張りすぎて今日は寝不足なんだ。」
「はぁ。それで?」
「、お前は俺に借りがあったはずだよな。」
「げ・・・。」
「膝枕頼むぞ。」
そう言った奴は有無を言わさず私の太股に頭を乗せた。
足にかかる重みが心地良い。温もりも心地良い。それよりなにより、こうやって何だかんだと言いながらこの男の隣にいることが心地よくって仕方がなかった。
あとがき
ミニ連載に加え、初花祭りにも登場の鳳鏡夜。