2月1日
アンチューサ
― 真実の愛 ―
女は捨てるほど抱いてきた。
そこには愛も恋もない。
それがわかった時、男と言うものは特別な感情がなくても女を抱けると実感した。
「淋しい人ね。」
あの女はそう言った。
「それに、馬鹿ね。」
ニコリと笑って言う。
「じゃ、私帰るわ。バイバイ、ベーベちゃん。」
そう言った女は、服装を整えると部屋から出て行った。
それが、俺には無性に腹が立った。
そしてそれがキッカケなのか分からないが、その女から目が離せなくなる。
「跡部さん。」
「なんだ。」
「なにか用でもあるのかしら?」
「いや。」
「それじゃ、帰っていいかしら?」
俺は放課後、誰もいない屋上にそいつを呼び出し、俺たちは向かい合った。
あの時と同じように立ち去ろうとする女に向かって、考えても分からなかったことを聞いてみた。
「聞きたいことがある。」
「なに?」
扉に向かう足を止め、頭だけでこちらを見る。
「ベーベって誰のことだ。」
「…?あぁ。」
少々考えたそいつはニコリと笑い指を指してきた。
「あなた。」
「…。何でだ。」
「わからなかったの?」
「・・・。」
頭いいのに、馬鹿ね。と呟いたそいつは呆れた表情を浮かべた。
「ほら、赤ん坊って愛を求め彷徨うでしょ?」
だから、あなたはべーべちゃんだわ。とクスリと笑った彼女はまた足を進めはじめた。
ドアノブに手がかかり、彼女は何の躊躇いもなく消えてい…く…。
「じゃー、愛を教えてくれ。」
「私は、跡部景吾が好きよ。氷帝学園テニス部部長でも、生徒会長でも、跡部財閥御曹司でもなくってね。」
こちらを見て微笑んだ彼女は、扉の向こうに消えていった。
俺はただ一人立っている。
残された屋上から見える夕日はいつも以上に綺麗で、これが俗に言う好きな人がいると人生薔薇色に見えるってやつか…なんて柄にもないことを思った。
彼女がくれる真実の愛。
(俺の世界は180℃変わる)
あとがき
リハビリ庭球第二段。またしても跡部。頑張りたい。