2月11日

エンドウ
― 未来の喜び ―






「指きりげんまん嘘吐いたら針千本飲ーます。指切った!」

立ち寄った公園では、子供が二人指切りをして各家に帰っているところだった。

「懐かしい・・・。」
「なにが?」
「指きりよ。」

したことないの?と訊ねれば男は大した興味もなさそうにあぁと答える。

「流石は火村。」
「何が流石だ。」
「昔から冷めてたのね。」
「まぁな。」
「それじゃ、はい!」

はピンと小指を立て、火村に差し出す。
それを見た火村は怪訝そうな表情でを見る。

「何やってんのよ。ほら、火村も!」
「何するんだ?」
「指きりに決まってるじゃない!」

当然の如く言われ、に片手を奪われる。正確には小指をだ。

「指きりげんまん」
「何を約束する気だ?」

いつものように突拍子もない行動に出たに、慌てて問う。
考えていなかったのかは、目をパチリとさせ首を傾げた。

「なにかある?」
「考えとけ。」
「むー。」
「膨れるな。」

思案顔で頬を膨らます。随分器用なことをするなと思っていると、何を思いついたのかパッと顔を輝かせる。

「あ!」
「なんだ。」
「未来の約束なんてどう?」
「・・・火村にでもなるか?」

未来の約束なんてそんなものだろうとからかい半分でニヤリと笑えば、の頬はボッと赤くなる。
そんな彼女の姿が面白くて鼻で笑ってしまう。

「からかったでしょ。」
「そうでもないさ。」
「でも。」
「からかい半分だ。」
「・・・針千本だよ。」
「望むところだ。」
「・・・本当に飲ませるからね。」
「なんならアリスにも伝えておくか。」

共有の友人を出せば、は楽しそうに笑う。

「いいね。火村の死因は針千本って?」
「ネタ探しの推理作家先生にはいい話かもな。」

ははっ、と笑いあって気を取り直して小指を絡ませる。

「指きりげんまん嘘吐いたら針千本飲ーます。指切った!」
「ちゃんと叶えてよね?」
「あぁ。ほら。」

ポンと音を立てて手の上に乗った小さな箱。

「これで完璧に予約済みだな。」

呆気にとられる私を見下ろし、火村は楽しそうに笑った。



あとがき
未来の喜びと言うより、未来への喜び?