2月15日


― 協定 ―






「ここはひとつ、」
「手を結ぼうじゃないか。」

ギュッと握り締めた手。
あの男に泡を吹かせてやるんだと私は意気込んだ。

!」
「あら、どうしたのアリス?」
「どうしたのやあらへん!どう言うことや!」
「そのままよ。そのまま。」

ここは母校でもある英都大学の研究室。この研究室の持ち主は今は講義にへと出払っている。

「そのままっちゅーことは。」
「別れましょう。やっぱり、私たち友人がいいと思うの。」
「・・・。」

プププ。
おっといけない、いけない。
絶句してしまっているアリスを見て噴出したくなるが、ここは我慢だ。我慢。

「それに、火村と付き合うことにしたの。」

さらに固まってしまったアリス。いい薬よ。
いくら締め切りが近いからといって私を3ヶ月も無視した上に、編集者さんや同業者の女の人とは飲みに行ったの知ってるんだからね!
少しは反省しなさい!
だから、本当は別れるつもりなんてなかったし、先に手を打っていた私が危機的状況に追い込まれるなんてことも予想だにしていなかった。
だから、だから。今の状況が良くつかめていません。




「ア、アリス!」
「なんや。」
「ここ学校。」
「そやな。」
「火村も帰ってくるから!」
「見せつけとこうと思てな。は俺のもんやって。」
「な・に言って!」
「十分堪能したぜ。だから、帰ってくれるか。」

入り口から声がする。
今は客人用のソファーに押し倒されているからアリスしか見えなくて確かめられないけれど。
これは絶対、火村だ。

「アリス!」
「ほな、帰ろうか。」
「私も!」

この三つの台詞の間にアリスは私から退き、私の手首を掴んで軽がると持ち上げた。
ちょっと、えっと。これ恥ずかしいんですけど!
とにかく助けを!と火村を見るが頭を横に振られてしまう。

「ちょっと!火村!」
「悪いな、。アリスとは条約を結んでるんだ。」
「・・・。」
「そういうことや。」

詰めが甘かったなーとアリスは笑い、私を抱き上げたまま(俗に言うお姫様抱っこ!)ブルーバードまで運んでいった。



あとがき
初アリス。ではないでしょうか。