2月18日
フリージア
― 無邪気 ―
悪意がないというものは悪意があるよりも性質の悪いものである。
「これあげる。」
そう言って渡されたのはグリンピースの山。
「・・・。」
「食べれるでしょ?」
「食べれるが…。」
「それじゃ、よろしく。」
これは何回目だろうか。
一緒に食事をすると必ず何かを寄越してくる。
それはグリンピースであったり、ニンジンであったり、饅頭でもあった。
「どう思う?」
「どうって…普通なら苛めじゃないでしょうか。」
「そうか…。」
そうやって呟き去っていった上司を見ながら、原因である同僚の顔を浮かべる。
彼女、は優秀な死神でこの六番隊の第三席を勤めている。
本来ならどこかの副隊長になってもおかしくない実力の持ち主だが、その破天荒な性格ゆえに先送りにされているとか、いないとか。
彼女の行動には悪気はない。
他人から見れば悪意たっぷり十倍増しと言ってもいいくらいのものだが、彼女はそんな気持ちはこれっぽっちもないのだ。
ただ、楽しく過ごすためなど良かれと思っての行動だ。
だからこそあまり強く怒れない。
「はぁー。」
それをわかってか、上司でもある朽木隊長は俺に相談をしたようだ。(多分・・・)
いくら同僚だからと言っても、こう言っては何だが優秀な上司が理解できないことを俺に理解できるかと言われても、それには無理がある。
「恋次!」
「…さん。」
「白哉は?」
「執務室だと思います。」
「ん。ありがと。」
お礼もそこそこに彼女は執務室へと駆けて行った。
俺は怖くてなにも口を出すことは出来なかったが、ご機嫌で出てきたさんを見てこれで隊長の機嫌も直っていると期待したのは仕方がないと思う。
その後。
執務室から出てきた白哉の牽星箝がカラフルになっていた。
なんでも折り紙を巻きつけたとか・・・。
気が緩み、突然のことに噴出してしまった俺を誰が責められようか。
あとがき
六番隊の日常です。本当に無邪気というのは性質が悪いんですよ…。