2月22日

ユーチャリス
― 清純な心 ―






その音は、その人の心を映し出す。
清らかで純粋な音色。
陽だまりのように暖かで、闇の中の一筋の光のような柔らかさ。

「月森君?」
「あぁ、すまない。邪魔をしてしまっただろうか。」
「ううん。ちょうど休憩しようかなって思ってたから…。」

練習室のドアが開き彼女の顔が出てくる。
よかったら、どうぞ。と招かれ練習室の中へ入った。

「もしかして、次は月森君が使うの?」
「いや。…ただ、君の音が聞こえたから。」
「音が?」
「あぁ。綺麗な音だったよ。」
「まだまだ。月森君には敵わないよ。」

そう言って君は笑う。
でも、君は知らないんだ。
君が好きだといってくれた俺の音は君によって作られた。
コンクールの時からオーケストラの時までも君の音によって俺の音楽は変わったんだ。

「月森君。」
「なんだ。」
「あのさ。よかったら、弾いてもらえないかな?」

差し出されたのは先ほど彼女が練習していた楽譜。
付箋や書き込みが多くされており、音楽に対する姿勢の高さが窺えた。

「あぁ。構わない。」

そっけない了承の言葉に彼女は微笑んだ。
ヴァイオリンを取り出し、弓を滑らせた。自分でもわかる。
ただ、美しく綺麗に洗練された完璧な音楽を目指していたときの音とは違う。
その時にはどれだけ練習しても出せなかった音が、彼女に会ってからの俺には容易く出せた。
こんなにも楽しく演奏できることを教えてくれたのは彼女だ。

「私。」

演奏が終わり彼女がポツリと呟いた。

「月森君の音好きだよ。綺麗で暖かくって、清純って言うのかな?」

すごく好き。と告げた彼女を抱きしめる。



あとがき
コルダより月森です。