2月23日
カーネーション
― 私の愛情は生きている ―
「先生。世界の滅亡はいつでしょうか。」
ゼミの中でも優秀なほうで、他の教授軍からも一目置かれている彼女が真剣な表情でそう尋ねてきた。
「どうしたんだ。」
「いえ。ノストラダムスの予言は外れちゃいましたから、いつなんだろうなーって。」
「くだらないな。」
「そうですか?」
「あぁ。」
ここは火村の研究室。
そんなところに彼女が居るのは先週末に出したレポートの提出だったからだ。
提出してさっさと出て行けばよかったのに、彼女は立ち呟いたのだった。
「でも、気になりません?」
「ならないな。」
「だって、やりたい事とか沢山あるじゃないですか。それに…」
「それに?」
「最後だって言われたら、玉砕覚悟で頑張れるのかなーって。」
「ほう。が玉砕覚悟か。」
「えぇ。先生はこの世界が終わってもいいんですか?」
「…そうだな。犯罪者が一掃される。」
「…まぁ、そうですけど。」
納得いかないなーとブツブツ言っている彼女にヤレヤレと溜息をひとつ。
「世界が終わっても残るだろ。」
「何がですか?」
「塵になる。」
「…先生ってば私のこと嫌いですか?」
「生憎、今はコレで手が一杯でな。」
彼女の持ってきたレポートと学会前の準備を指した。
それをみた彼女は「お邪魔しました。」と一言言って研究室から足を一歩出す。
「あぁー先生。世界が滅亡しても私の愛は生きてますから。」
「・・・。」
「それでは。」
爆弾発言の後、彼女は本当にその姿を消した。
助手を雇ってなくてよかったとか、通行者が居なくてよかっただとか、アレはどう取ればいいんだろうかとか、くだらないことが頭を過ぎる。
10以上も年下の発言に惑わされている自分がいて、ただ鼻で笑った。
そう言えば、
何故自分は学会の準備で忙しいはずの手を止めて彼女の戯言に付き合っていたのだろう。
そうだあの時、
レポートを受け取った時点でさっさと追い出せばよかったのだ。いつものように。
いつも?
いつもはどうしていた?
いつも彼女は尋ねてくるが、用が済めばあっさりと引く。
他の女生徒みたくくだらない茶番に付き合わされることもない。
なのに、今日はどうした。彼女は足を止め、訳のわからない質問をし、こちらを乱すようなことを言って去っていった。
グシャグシャと頭を掻き、悩んだ末に大学以来の友人である作家先生に電話をした。
あとがき
火村先生がどんなのだったのか忘れてしまいました。ごめんなさい!