2月27日
ローダンセ
― 変わらぬ思い ―
「悪い。」
別れを告げられ早3年。
あのころ伸ばしていた髪はバッサリと切られた。
可愛いといってくれた服もいまはもうクローゼットの中にはない。
誕生日や記念日に貰ったプレゼントさえ捨ててしまった。
余韻に浸っていると携帯の着信音が鳴った。
「あーもう。はいはい。」
『もしもし。?』
「うん。それでなに?」
『なに不機嫌なのよ…。』
「別に、不機嫌なんかじゃ。」
『それじゃー落ち込んでるの?』
「・・・。」
『…まぁ、いいわ。それより、あんたも来るでしょ?』
私の口調に何かを感じ取ったのか話を変える友人。
「来るって…なに?」
『同窓会!メールしたでしょ。来週の土曜。場所はー』
同窓会。
そう言えば、そんなメールが来ていたかもしれない。
中高一貫の学校に通っていた私は高校3年のクラスの同窓会ではなく、一学年をまとめた同窓会が行われる。六年間もいれば、誰となく知り合いになってるからね。
「うん。行こうかな。」
『よし。参加ねー。』
それからちょっとだけ、昔話をして私は電話を切った。
来週の土曜日。
カレンダーにグルグルと大きな丸を書き込み、洋服どうしようとか皆変わってないかなとか、そう言えばあの人は参加するんだろうかなんて思った。
「しないよね。」
自分で言った言葉がやけに重くて、言わなきゃよかったなんて後悔した。
それでも、大学の講義が終わって美容院行ってボサボサの髪を整えて、お気に入りの服で決めて…あぁ、何で私こんなに頑張ってるんだろうと思いながら同窓会の会場へ向かった。
「お久しぶりー元気?」
「元気元気。そっちはどう?」
月並みな会話をしつつ会場内を見渡す。
いないか。やっぱり。
ちょっとショックを受けながらも誘われるままにお酒を飲んで、しゃべって、あのころに戻ったような気がした。
久々に会ったということでテンションが高かったのだろう、飲みすぎてしまった。
酔い覚ましも兼ねてベランダに行った。
「んー。気持ちいい。」
「大丈夫か。」
懐かしい声。
幻聴まで聞こえ出したのだろうかと思い、後ろを振り返ればあの人の姿。
「え、なんで。本物?」
「飲みすぎていただろう。」
本物ってお前は…。と苦笑しながら見てくる彼はあの頃よりももっと大人っぽくなっていて・・・・・。
どうしよう、心臓持たない。
「おい、聞いているか?」
「あ、うん。ちょっと吃驚して。」
「あぁ。幸村に誘われてな。」
「やっぱり…」
幸村君に誘われて困っている姿がありありと想像できた。
クスクスと笑っていると心なしかあの頃に戻れた気がして、気が緩んでいた。
「弦一郎も相変わらずね。」
「・・・。」
名前で呼んでしまった。
気がついてからはもう遅い。彼はこちらを見たまま睨んでいる。
「ご、ごめん。あの、ちょっとした冗談じゃなくて、その…」
「いい。気にするな。」
「怒ってない?」
「何で怒るんだ?」
「・・・そっか。」
ベランダで他愛もない会話をして、笑いあって、また別れに近づいた。
「あぁ、楽しかった。じゃーね。真田。」
「あぁ。」
家に帰ろうと駅に向かう途中、急に後ろから手をつかまれる。
「。」
「へ?」
「いや、。」
ここに来て初めて名前を呼ばれた。
もう、忘れたなんて嘘はつけない。もう・・・。
あとがき
あえてハッキリ書きませんでした。どんなに物を捨てたところで思いは捨てられないみたいな。