4月2日
カラー
― 乙女のしとやかさ ―
しと‐やか【淑やか】
[形動]
[ナリ]性質や動作がもの静かで上品であるさま。また、つつしみ深いさま。
「物言いの―なお嬢さん」「―に振る舞う」 BY 大辞泉
いつも、思っていた。私は本当は男で、あいつが女じゃないかって。
実際、幼い頃は公園で一緒に遊んでいると、近所のおばさん達から
「坊やもお嬢ちゃんもおいで。アイス上げるよ。」
ここまでは普通。
私もあいつも一緒におばさんの所に走った。そして、
「坊やは何がいい?」
と、私を見て言うのだ。
そこであいつが「バニラ。」なんて言ったら「はい、お嬢ちゃんはバニラね。」
今度はあいつを見て言うのだった。
私の髪は短かったし、そこら辺の男の子より背も高かった。
始めのうちは、「私、女の子だよ。」と言っていたのだが次第に仕方ないと諦めていた。
小学校に入学するとあいつはテニスを始め、クラスも違うわたし達は以前のように話す機会は無く、自然に距離をおいていた。
そして、家の事情によりあいつは神奈川へと引越し、わたし達の関係は切れてしまったのだ。
「失礼します。あの神崎先生はいらっしゃいますか?」
「あぁ、神崎先生。」
「はい。あっ!転校生のさんね。」
「はい、です。よろしくお願いします。」
「それじゃー行きましょうか。」
「はい。」
私は今月から立海に通うことになった。父親が海外に転勤することになり、母親も海外へと旅立ったためである。
もちろん、私も留学を迫られたが日本に残ると反対し、父の知り合いの家に預かってもらうことになったのだ。転校せざるおえなかったが高等部に進学するときは一人暮らしをしても良い。と言う条件で転校することになった。
急な転校で居候する家にもあいさつには行っていないのだが、なんでもこの立海にその家の子供がいるとのことだった。
って!そんな事言われてもわかるかーーーーーーーー!!
「さぁここがさんのクラスよ。」
神崎先生が扉を開けて入室を促す。
「HRの前に紹介しておくわね。」
神崎先生と目が合う。自己紹介をしろという事か。
「青春学園から転校してきました、です。よろしくお願いします。」
礼をすると纏めていた髪が落ちてきた。
そぅ、あいつが居なくなってから伸ばし始めた髪だ。あれから男の子として勘違いされることは無くなった。
「じゃーさんの席は・・・窓側の一番後ろよ。」
「はい。」
「教科書は隣の人に見せてもらって。」
「わかりました。」
指定された席に着くと神崎先生はHRを再開した。
「。」
「へ?」
急に隣の男子から呼ばれ間抜けな声を出す。
「忘れたのか?」
「えっ?なにを?」
「いや、なんでもない。」
「そう。」
変な人、目も開いてるかわんないし。
HRが終わると前の席の女子が話しかけてきて友達になった。
1時間目。 数学
「あの、教科書見せてもらってもいい?」
「あぁ。」
机をつけて教科書を真ん中におく。
何も話さない。先生の声だけを聞いている。
「えーとあの、」
「柳だ。」
「柳くん。私のこと知ってるの?」
聞きたかったことだ。さっき言葉を濁らせたので気になっていた。
私の質問に驚いたのか柳くんはノートを取る手を止めていた。
「幼馴染だ。」
「誰が?」
「と俺だ。」
「うそ。だって、私の幼馴染は・・・」
ウソだ。私の幼馴染は私なんかより淑やかで、女の子らしくって、可愛くって。
こんな、こんな。
「思い出したか?。」
「うそ。蓮ちゃん?」
「あぁ。」
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!嘘だーーーーー!!!」
私は大声を出していた。ヤバッ、私の悪い癖。
驚かされたり、反抗すると自然と声がでかくなる。
「なにが嘘なんだ、。」
「え、・・・・・。」
先生もクラスメイトも見ている。あぁ、初日早々やっちゃった。
蓮ちゃんのほうを見ると平然としている。
・・・嵌められた!
お父様、お母様。私は淑やかさと一生かかってもお友達にはなれそうにないです。
おまけ
「え・・・なんで居るの!」
「家はここだからな。」
「じゃー私の居候する家ってまさか・・・」
「俺の家だ。」
「うそ・・・」
「本当だ。それより、髪伸ばしたんだな。」
「あっ、うん。」
「似合ってる。可愛いと思うぞ。」
「ありがとう///」