リナリア
― 私の恋を知ってください ―
ねぇ。知ってる?
私は随分と前から、貴方と会った時から、貴方に恋をしてるの。
勿論それとなく、貴方に言ったことあったわよね。私が酔っ払ってたから、貴方は「あぁ。」と流したわね。
結構、ショックだったの。素面じゃ言えなかったから、お酒の力を借りて言ったのに。相手にしてくれないのだもの。
でも、面と向かっていえないの。
貴方を前にするとドキドキして上手く舌がまわらない。
「そんな歳じゃないだろ。」、なんて貴方は言うだろうけど、ホントなのよ?
「久しぶりだな。」
「うん。相変わらずだねー。」
フッと口を歪ませ笑う。そんな仕草さえ私の心をドキドキさせる。
「買い物?」
「あぁ、じゃんけんで負けてな。」
「そりゃ、残念。」
スーパーで会った彼は似合わない買い物籠をぶら下げて次々と野菜を、肉を放り込む。
「アリスは?元気?」
「なんだ、連絡してねーのか。」
「うん。忙しいかなーって。」
「あいつが忙しい時なんてあったか?」
「ちょっと、親友としてないんじゃない?」
「そうか?」
また笑う。 またドキリ。
「お前は?」
「ん?なに?」
「どうなんだ?」
「元気よ。」
「そうか。」
「うん。」
「じゃぁ。」
「・・・おい、。」
「ん?なに。」
「お前も来いよ。」
「どこに?」
話の筋が見えない。どこに行くんだ?
「久しぶりだろ。お前も一緒に飲もうぜ。」
「・・・。」
嬉しいかもしんない。
火村に誘われるなんて、数えるほどしかないのに。
「うん。」
「よし。じゃーいくか。」
そう言った火村は、手早く会計を済ませると、私の横へ並んだ。
「歩き?」
「あぁ。」
「めずらしい。」
「なんとなくだよ。」
「そっか。」
「お前は?」
「車持ってません。」
「そうだったな。」
「うん。」
「行くか。」
「おう。」
買い物袋を片手に並んで歩く。
「おい。」
「んー。」
急に火村が足を止め、進みすぎた私が振り返った。
「なに?」
「よこせ。」
「は?」
「買い物袋だよ。」
「いいよ。別に。」
「いいから。」
ギュッと買い物袋を握り締めたが、そんな抵抗はむなしく、火村のもう片手へと移動した。
「もぅ。」
「いいんだよ。俺のポリシーに反する。」
「女に荷物を持たせるなって?」
「あぁ、特に好きな奴にはな。」
「ッ・・・。」
火村は笑う。
「冗談止めてよね。」
「誰がそんなこと言った?」
「・・・・・。」
私は立ち止まる。火村は歩き続ける。
私が好きなことを知ってるのか、それともただ揶揄っているだけなのか。
火村は遠くへ行ってしまった。私は呼吸を整え、火村めがけて走る。
聞いてみよう。
『ねぇ、私の恋を知ってますか?』