8月24日
ドウダン
― 明るい未来 ―
白いベェールを被り、白いドレスに身を包み、白いブーケを持っていた。
そんな姿の姉が私はとても羨ましかった。
私もいつか、あんな風にとても好きな人に嫁ぐんだと心に決めていた。
でも・・・
「はぁー。」
「辛気臭い顔をしてるんじゃない。」
貴方に言われたくないです。と思いつつ話しかけてきた男のほうを見る。
中禅寺秋彦、通称京極堂と呼ばれている男の家にここ数ヶ月居候させてもらっていた。
「そういってもですねー。」
「またお姉さんのことかい?」
「はい。」
幸せそうに結婚したはずの姉はたった数ヶ月で家に戻ってきた。
なんでも義兄さんが浮気したとかで…
結婚したら幸せな日々が続くと思っていたのに、私の認識は甘かったってことか…。
「なんだか未来が真っ暗です。」
「明るい未来を想像することが無駄だよ。大体ね、明るい未来なんてものがあると思うのかい?明るい未来なんて言うものは個人の考え一つなんだからね。そんなものを鬱々考えると君まで関くんみたいになるじゃないか。」
「わ、わかってますよー。」
「わかっているんなら、買い物にでも行ってきてくれ。今日は千鶴子がいないんだよ。」
「えー、ってことは京極さんの夕食ですか?」
「・・・。」
「冗談ですよ、私が作ります。それじゃ。」
ギロリと睨まれたまま、財布を掴むと家を飛び出した。
あの人を揶揄うのはやめよう。と心の底から思う。
そう思うとあの人を振り回している榎木津さんは凄いなーなんて思う。
「って、何故に榎木津さん!」
「呼んだか?ちゃん。」
「のわ!な、何してるんですか!危ないですよ、降りてきてください。」
見上げれば木の上に立ちこちらを見下ろしている榎木津の姿が。
大きく足を開き手を組んで、わははと叫んでいる。あ、危ない。
「榎木津さん!」
「よし。」
私が叫ぶと同時に、その人は飛び降りてきた。
…心臓に悪い。
「なんだ、浮かない顔だな。」
いや、貴方の性ですとも言えず黙り込む。
するとじーっと私の眼を見て…眼を、記憶を…
「馬鹿だなー、お姉さんが不幸でもちゃんの未来は明るいゾ!」
「え?」
「神と結婚するんだ、幸せに決まってるダロ!」
・・・明るい未来が見えた気がした。
後書き
似非榎さん。