8月27日
ヒペリカム
― きらめき ―
足りない。
世の中には血が不足している貧血とかお金の足りない金欠とかあるって言うのに、きらめき不足を表す言葉なんてこの世には存在していない。
ねぇ、おかしいと思わない?
「思わない。」
「…グサッと、きたよ。」
「大体、あんた何考えてるわけ?きらめきなんてそこら辺に落ちてるじゃない。」
友人のキッツイ一言に落ち込んでいると、またもや友人が私を浮上させる言葉を発した。
なになに?きらめきが落ちてるですと!
隈なく探したはずなのにな〜なんて思いながら、友人の指差す方向を見る。
窓をすり抜け指差された方向にあるのは、人の山。いや、失礼。テニスコート。
「・・・。」
「あそこはきらめきの宝庫じゃない。」
「えぇぇ!まさか貴方もファンクラブ会員なんですか!!」
知らなかった…。友人歴3年目の真実ってやつね。
テニスコートと言うのは、何処にでもあるテニスコート。しかし、そのテニスコートにいるテニス部員(モチロン、男テニね)が問題なのである。
レギュラーと呼ばれる奴らはそら、もう、美形ぞろい。それも一人一人にファンクラブがあると言うから恐ろしい。
そんな彼らを落そうと躍起になっているのがテニスコート前の人の山。女だらけである。
「アホ。馬鹿、マヌケ。」
酷い言葉三連発と共に頭、胸、鳩尾と綺麗に拳が炸裂。
痛い・・・。
「そうじゃなくて、あそこならきらめきがあるでしょ?ってこと。」
「………。」
「何意地を張ってるのよ。」
「意地なんて張ってませんことよ!」
「白々しいなー。バレバレなんだから諦めなさい。」
バレバレって…これでも結構気をつけてんですけど。
「アンタは顔に出るからね。」
「さいですか。」
「さいですよ。」
「モロバレ?」
「そうだねー。きらめきの君は知ってるんじゃない?」
「・・・。」
恥ずかしい。
穴があったら入りたいとはこのことだと思う。
すると追い討ちをかけるように「あ、そうそう。伝言あったんだった。」と微笑む。
「伝言?」
「放課後、屋上で待ってる。ってさ。」
「誰が?」
「きらめきの君。」
「はぁぁぁ!!!」
「早く行ってあげなさいよね。報告宜しく〜。」
それだけ言うと、友人は出て行った。
おいおい、放課後って・・・もう放課後になってから30分以上も経ってるんですけど!
早くも何もないって…なんて思いながら屋上への階段をダッシュで登る。
「あの!!」
扉を開くと同時に大声を出す。
どうか、いてくれますようにと願いながら、帰っていませんようにと望みながら。
「あぁ、よかった。もう、帰ってしまったのかと思ったんだが。」
「今、さっき聞いてその、急いだんだけど。」
「あぁ、それくらい分かる。息切れが激しいな。」
落ち着けようと息を整えて前を見ると、目の前にはきらめきの君、柳蓮二がいる。
何で呼び出されたんだ!もしや、この気持ちが分かってて迷惑だ。とか?
寧ろ、君とは付き合えない、友人としてもだ。とか?
頭に過ぎるのは最悪の事態。
「…悪いな。手間を取らせて。」
「いや、全然。にしても珍しいねー柳くんから誘うのって・・・。」
「あぁ、そうだな。言いたい事があってな。」
キタ!
「俺はお前が好きだ。」
「お前…。」
突然のことで思考停止中。お前って、お前だよね。
つまり、えーっと…
「のことだ。」
「はぁ。」
ですよねー私のことしかないじゃないですか。
って、えぇぇ!!
「嘘!」
「本当だ。これとなく告白紛いなことを言ったはずなんだが、気付いていなかったか。」
「知らない。」
「それで、返事は?」
返事って。返事ってそんなの・・・。
(きらめきみーつけた)
後書き
恥ずかしくて死にそうです。