8月29日

アスター
― 追想 ―




「そこの2人待ちなさーーーーーい!!!」

追いかけてくるのはレイブンクロー監督生でもある
2人、俺とジェームズは目を合わせると二手に別れた。

「シリウス・ブラック!今日と言う今日は許さないわ!」

が追いかけたのは俺。
ちらりと後ろを見ると、顔を真っ赤にさせて追いかけてくる。
周りを見るも助ける人はなし、殆どが見物客だ。
そのなかにリーマスもいたが「頑張ってね」と相変わらずの笑みを浮かべて手を振ってきた。
アイツ、裏切りやがったな!
今すぐにでも文句を言ってやりたいが、そんなことをすればに確実に捉まる。捉まった後は、散々説教をされて罰則としてマグル式のトロフィー磨きでもさせられるんだ。
あれは面倒だな。と心の中で思うと窓を目掛けてダイブ!

「よっと。」

2階から軽やかに着地をすると少し離れた木の上に登る。
よし、これで撒いただろうと安心していると遅れてやってきたが2階の窓から飛び降りた。

「おいおい、マジかよ。」

心配して下を見ると、やっぱり着地に失敗していたようで蹲っている。
立ち上がってみるも歩き方がどうもぎこちない。右足を引きずっている。
おそらく捻挫でもしたのだろう、しかし何故治さないのだろうか。はレイブンクローにいるだけあって優秀な魔女だ。傷の1つや2つ、捻挫の1つや2つくらいなら治せるはずなのに…。

「あいつまさか、杖がないんじゃ…」

蹲ってしまったを見て、溜息をつく。どうやらそのようだ。
仕方ないか、と木から降りるとこちらを見たの頬が膨れた。

「シリウス・ブラック!」
「よう、大丈夫か。」
「なんで貴方に心配されないといけないのよ!大体、アンタが逃げなければこんなことにはならなかったんじゃない。」
「いけないな、。自分の運動音痴を人のせいにするなんて。」
「なっ!だれが運動音痴ですって!」
「お前。」
「腹立つわね。」
「…で、お前杖どうしたんだよ。」
「誰かさん達が急に仕掛けていたからね、落しちゃったのよ。」
「あー…ご愁傷様?」
「少しは反省なさい!貴方がセブルスを嫌ってるのはわかってるけれどね、物には限度と言うものがあるわ!考えたらどう?」
「へーレイブンクローの監督生様はスニベルスと仲が良いようで。」
茶化しながら言うとキッとこちらを睨んできた。
「えぇ、そうね。仲は悪くないと思うわ。それよりそんな呼び方をしないで!」
「・・・。」
なんだか、むしゃくしゃする。
「わかった?」
「あぁ。」
仕方なしに頷くと、は微笑んでいた。
その初めて見た笑みに俺の視線は釘付けだった・・・。



アズカバンの牢獄の中で思い出すのは、の表情。
あれからどうしているのだろう。
俺が捕まったことは知っているはずだし、「あぁ、やっぱり」とか「友人を殺すなんて最低だわ」と思われているのだろうか。
もしかしたら、俺のことなんて忘れているのかもしれないし。誰かと結婚している可能性だってある。
そんな想像をして苦笑する。もう随分会っていないと言うのに俺の心はまだに掴まれたままだ。
さて、こんな妄想紛いのことも終わりだ。潔く行こう。あージェームズが言ってたことがあったな、確か当たって砕けろだったかな?砕けるのは極力遠慮したいんだが…まぁ、仕方がない。
長年の想いに白黒つけよう。



後書き
思い出を振り返る…すると見えた恋心。みたいな。