8月30日

ルビーグラス
― 自然の恵み ―




夏に予期せぬ大きな台風があった。
被害は壮大、今年の収穫高は望ましくないかもしれない。そんなことを劉輝はに呟いた。
すると彼女は、そうでしょうかね?と暢気に言っていた。

「どう思う、絳攸、楸瑛。」
の言うことだ、何か裏があると思うが…。」
「確かに。彼女が何もなくてそんな軽率な発言をするとは思えないしね。」
「そうか・・・。」
「それより主上、我々はどう動きますか?」
「うむ・・・。」

悩む劉輝。暫しの沈黙が執務室に流れる。

「あぁーもう、見てらんないよ!」
!」
「絳攸、そう目くじらを立てちゃ駄目よ?皺になるわ。」

ツンと寄せられている皺を押さえ笑いかける。

「それより、どうしたんだい?」
「ん。あぁ、聞いていられなくてね。まったく…」

溜息をつきながら、これだから良家のお坊ちゃまたちは…とブツブツ呟く。

「何か当てはあるんだろうな。」
「あるも何も…。」

絳攸に見据えられたまま、これまた呆れたように肩を竦める。
そしてビシッと劉輝、絳攸、楸瑛に指差ししっかり睨む。

「君たちは大切なものを忘れているよ。」
「大切なもの?」
「そう、いくら損害が酷く見えても根はしっかりしていた。だから、大丈夫だよ。」
「これから育つと言うのか。」

勿論よ、とばかりに大きく首を縦に振る。

「それにお役人様方は頭抱えてるけど、農民にはこのくらいのことは予想しているの。だから、貴方たちがすることは水路と河川の氾濫を修復することよ。」
「はぁ・・・。」
「それだけでいいのよ。私たちが心配しても、農民が心配しても始まらないの。自然がどうにかしてくれるんだから。」

そう言いきる。その表情はとても朗らかで自信に満ちている。
一体どうしてそこまで信じれるのだろうか。自然と言う目に見ることも出来ず、声を交わすことも出来ないものを。
水路の建て直しと河川の氾濫を防いだ後、に尋ねてみたら、「大地は自然の母親なんですよ。」と嬉しそうに答えた。

母親は強し。そのせいか、どうかは分からないがの言ったとおり、豊穣祭には例年と変わらず多くの農作物が出来上がることになる。



後書き
母親の愛情と共に子は育つ。