8月31日

竜胆
― 正義 ―



犯罪と戦っている貴方を世間はどのように批評するのだろう。
犯罪とは悪なのだから、一般的には正義なのかもしれない。
しかし、多くの人は貴方の行動をただの偽善だと思っているだろう。
かつて私がそうであったように・・・。

、そこでなにしてる。」
「ん?あぁ、先生か。」
「いくらお前が馬鹿とは言え、風邪引くぞ。」

雨の中、傘も差さずにぼっと立っていた私は声のしたほうを見る。
先生は窓から私を見て呆れている。そう言えば研究室に今日はいるって言ってたなと思う。

「ほら、入ってこい。」
「…いいの?」
「あぁ。」

意外な申し出ににっこり笑って窓から侵入すると、更に呆れた表情の先生が私の頭を叩いた。

「痛いです。」
「窓から入る奴がいるか。」
「うー」
「ほら、さっさと拭け。」

これでも、レポートとか書類に水滴を飛ばさないように気をつけてるのになんて思いながらばさりと被せられたタオルで水気を取る。
こっそりタオルに隠れながら先生を見る。

「で、何をしていたんだ。」
「えっと…悪について考えてました。」
「わかったのか?」
「いや…全然。」

煙草に火をつけた先生は私を見てニヤリと笑う。

「随分、悩んでいたみたいだな。」
「まぁ・・・。」

先生はニヤリと笑う。
その心には何を思っているのだろう。
先生が定義づけられない悪を私が定義づけるのは難しいことだ。
でも、貴方は私にとって正義だった。



後書き
救われぬ思いだと思ってました。