12月3日
ストック 八重咲き
― 永遠の美 ―
「平井さんになりたい。」
ボソッと呟いた彼女の言葉は一緒にお茶をしている三爺たちを驚かせる。
「どうしたんじゃ、ちゃん。」
「悩みでもあるのかい。」
「早まっちゃいかんぞ!ワシらがパパッと解決してやるからな。」
まさかそこまで驚かれるとは思っていなかったので、笑いながら「悩みじゃありませんよ。」と口を開いた。
そう。悩みなんてものじゃない。
実際悩んでいるわけだから、悩みだろうといわれればまぁ悩みではあるけど、微妙なラインをさまよっている問題だ。
大体女なら一度は考えるんじゃないだろうか。
東子さんもそんなことを言っていたしな。そうだ、別に私だけが悩んでいるわけじゃない。
平井さんかー。いいなぁー羨ましい。あ、エンジェルさんも良いよな。好きなことしてるし、幽霊になっても徳光さんに恋しているし…。
やっぱり平井さんよりエンジェルさんよね。
どこを見るわけでもなくぼーっと庭を見ながらそんなことを考えている目の前に突如大家さんの顔が現れた。
「うぎゃ!」
「…人の顔を見て驚くなんて、酷いですね。」
「あぁ、ぁ…ご、ごめんなさい。」
「いいんです。」
にこりと笑った大家さんは「それより」と口を開き真剣な表情でこちらを見てくる。
家賃はちゃんと納めているし、三爺とちょっと悪戯をしてしまった時に割れたお皿ならちゃんと弁償したはず…。
なにか私は途轍もないことを仕出かしたのだろうとゴクリと息を飲み、大家さんの次の言葉を聞いた。
「エンジェルさんになりたいと言っていたそうですね。」
「…言っていたんですか。」
「三爺が泣きついてきましたよ。」
言葉通り泣きついたんだろう。簡単に想像が出来た。
しかし、それだけで態々大家さんが来るなんて…いったい何を言ったんだろう。
「さん、聞いていますか?」
「へ?あ…聞いてませんでした。」
全然聞いてなかった。
しょんぼりと肩を落とすと、大家さんは「仕方のない人ですね。」と言いながらも、優しい笑顔で微笑んでくる。
・・・やばい。顔が熱くなってくる。まともに正面から大家さんの顔を見ることが出来ず、次第に頭が下を向き始める。
「さんは綺麗ですよ。」
「はぁ…。」
お見通しって訳か。更に恥ずかしくなってしまう。
「それでも心配というなら、一緒に歳をとりませんか。」
その言葉は、一体どういう意味で取れば良いのか。
尋ねても教えてくれないんだろうなと思いつつ、真っ赤に染まった頬を手で押さえた。
後書き
確か今月新刊がでるはず…