12月9日

バラ
― 温かい心 ―





「綺麗な花には棘がある。」
「薔薇姫のことか?」
「…でも、薔薇の花言葉は温かい心なのよ。」

彩雲国国王・紫劉輝と専属女官であるは活けられた薄紅色の薔薇を見ながら微笑みあった。

「温かい心。」
「そう。薔薇姫は棘を身に纏い、誰の手にも触れられないようにした。それは、彼女の心が荒んでいなかったから、相手のことを少なからず思っていたのよ。」
「でも、棘が…。」
「棘は目に見えるわ。本当に誰にも自分を近づけさせないようにするなら、目に見えない毒でも纏えばよかった。」

「ね?優しいのよ。薔薇は。」とにこりと微笑みながらは劉輝に語りかける。
は活けられている薔薇の花に視線を移す。薄紅色の薔薇に秀麗の姿が重なる。
そう。あの姫も優しかった。そして、温かい心の持ち主であった。
劉輝を見ると彼も、薔薇を見てその瞳はとても優しかった。
・・・フッと微笑んだ彼女は奥の部屋に入ると二胡を手にして静かに音を奏で始める。
それは秀麗が貴妃としてこの後宮に入った時に奏でていた音楽。優しく、独りぼっちだった劉輝を暖かく包み込んでくれた音色であった。
劉輝は音に釣られるように部屋へと入って来る。
その目には何が映っているのだろうか。本当の貴妃にはなれないと言った秀麗の姿だろうか。
秀麗と夫婦になりたくば、やるべきことは1つしかない。劉輝自身が玉座を、王であることを捨てることだ。
それでも、彼はここの場所に居ることを望んでいる。
そのことを彼自身が気付いているかは定かではない。

は、悲しそうな表情を浮かべながらもここの場所を自分の場所と位置づけた劉輝の力になりたいと思う。自分には音を奏で、彼女との思い出を共に語ることしか出来ない。



それでも。
は願う。彼ら二人が幸せになれる道があることを―…‥・。



後書き
劉輝夢じゃないけど…劉輝とならこんな感じがいいなぁと。