12月12日
ゲイソリーザ
― 心弾む知らせ ―
部屋の四隅をくまなく移動する。
右に左に、前に後ろ。部屋の中に置かれている机と書簡を上手に避けて、忙しなく動き回る。
彼にしては大変珍しい行動だろう。今ならば、この彩雲国を一周出来そうなな勢いだ。
「絳攸。落ち着いたらどうだ。」
「そうなのだ。」
「落ち着いている!」
そんな怒鳴りながら落ち着いていると言われてもこれっぽっちも信用できない。
自称・落ち着いている男、李絳攸は変わらず部屋の中をぐるぐると回っている。
そんな様子を見た同僚と上司はこそこそと話をし始めた。
「楸瑛。今日は帰した方がよくないか?」
「出所しろ!って言われてるらしいですよ。」
「が言ったのか…。」
「えぇ、絳攸も奥方には弱いですからね。」
「うむ…。しかし、絳攸の気持ちもわからなくでもないぞ。」
「まぁー初めての子ですからね。心配なんでしょうが…。」
こっそりと耳打ちしあいながら、絳攸を見る。
ウロウロ、ウロウロ。これは即刻帰宅させるべきだと判断したよき友人とよき上司は軒を用意するとその中に絳攸をポイっと投げ込んでしまう。
「さっさと帰るのだ。」
「奥方に宜しく頼むよ。それと生まれてくる子にも。」
「貴様なんぞにはやらんからな!」
いつもの調子が少しだけ戻ってきたようだ。
よかったと心で呟き、劉輝と楸瑛は書簡の溜まった部屋へとゆっくりと帰って行った。
「それで、帰ってきたのですか。」
「わ、悪かった…。」
「はぁー仕方ありませんね。」
帰るには帰ったが、入るに入れず、ウロウロと家の前をしていたところ使用人の一人に見つけられ、妻のところへと通された。
妻、は絳攸を見ると「あれほど言ったのに!」と鬼の形相で怒っていたが、クスリと笑うと奥の部屋を見る。
「女の子でしたわ。」
「!そ、そうか!」
「抱いてやってくださいませ。早くしないと黎深様を父親と勘違いしてしまいそうですから。」
クスクスと笑う妻を尻目に慌てて奥の部屋へと入る。
黎深が赤子を抱いている。その横では百合様が「ほら、黎深。絳攸に抱かせないか!」と説教をしている。
後からやって来たは、そっと絳攸に寄り添うと小さく呟いた。
「幸せですか?旦那様。」
その問いにゆっくりと頷き、額に口付けを落とした。
後書き
子供が生まれて一番喜びそうな家庭だと思う。