12月13日

シルバーレース
― あなたを支える ―




その人が何を抱えているのか分からない。
私はその人みたく聡いわけでもないし、その人のことを良く知っているわけでもない。
抱えている何かをその人が口にするはずがないわけだから、私がその何かを分からないことは当然のことだとも言える。
けれど…その人の力になりたいと思っているのは確かだ。

膝の上で眠るその人の髪を優しく撫でる。
その人、桜井京介はただ眠っていた。その寝顔を拝見することは出来ないが、一定の呼吸音で心地良く眠っているのだろうと推測する。

「おじゃましまーす。…さん、いる?」
「あら、蒼君。」

鍵を開けて、リビングへひょっこり顔を覗かせたのは蒼君。
初めて会ったときには、まだ高校にも行っていなかったが、今はもう立派な大学生だ。

「京介も来てたんだ。」
「えぇ、今はお昼寝中だから…。」

しぃーっと人差し指を口に当てると、蒼君も同じように返す。
可愛らしい仕草にフッと微笑みが漏れる。
蒼君は『コーヒー飲む?』とカップに何かを注ぐジェスチャーで私に尋ねる。
口パクで『お願い』と頼むと、蒼君は嬉しそうに笑ってキッチンへと頭を引っ込める。

「可愛い。」

そんな独り言に返事が返ってくるとは思っていなかった。
だから、ちょっとだけ吃驚して肩を竦める。

は可愛いものが好きだね。」
「…起こしちゃった?」
「いや、蒼が来た時にはもう目が覚めてた。」
「覚醒するまでに時間が掛かったのね。」

クスクスと笑うと低血圧の京介は「違う」とはっきりと口にする。

「そうなの?あぁ、京介も蒼君のコーヒー飲むでしょ?」

珍しいと思いつつも、膝の重みがなくなり身が軽くなると蒼君のいるキッチンへと足を進める。
そう。進めた。
それなのに私の体はまだリビングにある。

「なに?」
「起きなかったのは、の膝が心地良かったからだ。」

後ろ向きに抱きしめられ、そう耳元で囁かれた。
深春がいたら「お前って奴は…」と呆れられているか、もしくはゲラゲラと笑っているかのどちらかだろう。
恥ずかしくて、ボーっとしているところに蒼君がコーヒーを持って来てくれなかったら、私はあのまま意識を失っていたかもしれない。

「蒼、僕の分は?」
「もう、自分でやりなよ京介!僕はと話があるの!」

そんな言葉で現実に引き戻され、仕方ないと首を振りながらキッチンへ行く京介の背中を見ているとギュッと手を握られ慌てて蒼君の方を見た。

「話って?」
「あのね、        」

私よりも十分付き合いの長い蒼君からの言葉に私は言葉も時間も忘れて、ただ、顔を真っ赤にさせた。


『京介が支えとしているのはしかいないよ』



後書き
蒼くんに言われると自信つきそうですよね。