12月14日
シンビジウム
― 深窓の麗人 ―
口を開いたのは彼女が先だった。
「そう言えば、知っていますか。」
「なにを?」
「噂されていますよ。」
その噂は…大変不名誉なことだった。
「男色…私がかい!」
「えぇ、主上でも絳攸様でもなく、藍楸瑛に男色疑惑ですって。」
クスクスと面白そうに笑いながら、茶を差し出した。
綺麗に開ききった花の香りを楽しみながら一口飲むと、心を落ち着かせる。
「今日は、絳攸様に入れ込んでいるって聞きましたよ。」
「!」
「度の過ぎた瓦斯抜きはお止めになってくださいね。」
「あぁ。」
「そうそう、駆け出し武官の雅真とも噂になっているんです。」
ふふっ、と笑った彼女の目はその口元とは裏腹に笑っていなかった。
雅真と言うのは彼女、が朝廷で働いている姿だ。名前の通り、男として働いている。
秀麗が国試を受けるずっと前に彼女は男装して、身分と名前、性別を偽って国武試を受験した。
そうして早1年。楸瑛自身も雅真が女であることに気がついたのは半年を過ぎた頃だった。
まさか昔馴染みのが男として朝廷で働いているとは思いもしなかったのだ。
「そう言うわけですから。」
文句を言う間もなくぴしゃりと言われ、ただ頷くしかなかった。
次の日から行く先々でその姿を見かけるものの、少し近寄ってみればそれはそれは恐ろしいほどの殺気で睨まれる。
それから何日が過ぎたのだろうか。
稽古を終えた部下たちが彼女の噂をしているのを耳にした。
「なぁーやっぱり、雅真の奴。」
「あぁ。」
「美人って言っていいのか…なんか。」
「わかるぞ。男の癖に美人なんだよな。」
「あぁ。時々さ、女に見えるんだよな。」
「藍将軍が男色にはしるのもわからなくないよ。」
噂をしていた二人に直々に稽古を付けて、溜息を吐く。
まだまだ噂が消えるまで時間が掛かりそうだ。
後書き
短い…でも、ギャグっぽくしたかったの!