包帯を捲きながらふと思う。
赤井さんってミイラ男みたい。それは私の口から無意識のうちに呟かれ、ミイラ男と称された赤井はこちらを見ていた。
「何を言っているんだ。」
「あ、私。口に出ていました?」
「思いっきりな。」
恥ずかしい。呆れた表情を浮かべられ、恥ずかしさは増すばかり。
「ほら、こうして包帯で捲かれているとミイラ男みたいじゃないですか。」
グルグルと捲かれる包帯を見ながら言い、今の赤井さんの状況を頭で浮かべてみる。
左手首、肩から腹部と包帯が捲かれている。
手首の包帯を捲き上げ、次は肩の傷の具合を見る。随分直っているようだ。
これなら数日には任務についても問題はないとは思う。けれど、油断は禁物だ。目を離すと直ぐに無茶をして傷口を広げてしまうからなーなんて思う。
「でも、全身じゃないですし。ミイラ男じゃないかもしれませんね。」
「・・・。」
返事はない。
しゃべりながらも、肩から腹へ前から覆いかぶさるようにしてぐるぐると包帯を捲いていく。
「半ミイラ男ってところでしょうかね。」
「・・・。」
最初の頃に比べると随分手際よくなってきたように思える。そう言えばと、初めて包帯を捲いて失笑されたことを思い出す。
この人は、あの時から変わらず私のそばに居てくれた。
「赤井さん?聞いてますか?」
私が声を掛けると少し驚いた表情で私を見てきた。
絶対聞いていなかった。これは確信を持って言える。どうせ、今後のことを考えていたのだ。
傷の具合もよくなってきて、じっとベッドにいるのも退屈になってきたところだ。先程、ジョディも来ていたし、今後のことについて話していたのかもしれない。
「先に言っておきますが、無理は駄目ですよ。」
「あぁ。」
「医師として後1週間はこちらに居てもらいますから。」
「そうか。」
「えぇ。」
「大丈夫だ。が心配しなくとも俺は休暇らしいからな。」
「へっ?」
意外な言葉に思わず間抜けな声が出る。
「ジュディから休暇が言い渡されたんだ、2週間な。遅めのサマーヴァケーションってことだろうな。」
「成る程。」
うんうんと頷き、「さぁ、出来ましたよ。」と優しく胸を叩き私は赤井さんから離れた。
「。」
「はい?」と後ろを振り向けば手を引かれ、ベッドの上に引っ張られる。抱きしめられ、髪を撫でられる。
「あの。」
「トリック・オア・トリート。」
「えっと…。」
どう反応しようかと考えていると額に軽く口付けられる。
「、お前も一緒に休暇らしいからな。」
「え!」
そんなの初耳なんですけど!って言うか、なんで赤井さんはそんなに嬉しそうなんだろう。
軽く押されベッドの上から降りる直前、耳元で囁かれる。
「ハロウィン、楽しみにしている。」
…私は、一体。どうすれば?
その後、ジュディに休暇のことを尋ねると「楽しんでらっしゃい。」と笑顔で送り出されることになる。