「ん?あぁ、君か。」
「どうも。」
「そんなに警戒しなくても榎さんならいない。」
「よかったぁー」
「君も厄介な人に目をつけられたな。」
「そう思うならどうにかしてくださいよ!!」
「今のところは害は無さそうだし、大丈夫だろう。」
「うーいいです!」
私はそっぽを向いてやった。
「ほら、君の探していた本だ。」
「え!うわーありがとうございます!」
「ちょうど手に入ったから取っておいたんだ。」
本に夢中になっている私の後ろの襖が開かれる。
「京極!!返せ!」
「榎さん、あなたはなんで」
「行くぞ!」
「えぇ!ちょ、ちょっと、京極さん!助けてくださいぃぃぃーーー」
その後、警察には女学生が眩暈坂で誘拐されているとの情報が入る。
榎木津 礼二郎
「れんじー。」
「どうした?」
「好きよ。好き、大好き。」
「そうか。」
「うん。」
「どうかしたのか?」
「んー?」
「いつもと様子が違う。」
「ふふふ、蓮二はデータマンでしょ?考えてみれば?」
彼女は不敵に笑う。
「・・・お前のことに関してはいつも予測不可能だ。」
「へーそうなんだ。知らなかった。」
「そうか。」
「じゃー教えてあげる。」
「あぁ。」
「私は蓮二しかいらない。だから、放さないでね。」
彼から私に沢山のキスが降る。これは結婚前夜、婚約者同士の話。
柳 蓮二
「おい。」
「何です?」
「何でそんなに離れてんだよ。」
「近寄りたくないからです。」
「テメェー」
「私の近くに来たいなら、跡部さんが動いたらどうです?」
「アーン。なんで俺様が動かなきゃならねー」
「なら、このままで。」
「・・・ッチ。」
頑固な私に舌打ちをする彼。
「何が気にいらねぇ。」
「別に。」
「ったく。・・・これでいいんだろ。」
「私の勝ちですね。」
「フン、そう言うことにしてやる。」
攻防戦は終わりを告げ、彼は私を抱きしめた。
跡部 景吾
「すまぬ。」
「かまいません。お仕事、頑張ってくださいね。」
彼女は彼を見送った。
いつもの事だ。
彼は隊長の上に責任感も強い、仕事にも熱が入りがちで、数少ないデートが流れることもしばしば。
それでも、彼女は笑顔で見送る。
それから昼が過ぎて、日も落ち、月もさよならを告げる頃、彼は帰ってきた。
「おかえりなさい。百哉さん。」
「まだ、起きていたのか。」
「会いたかったので。」
「そうか。」
「はい。お食事はどうしますか?」
「いらぬ。」
「そうですか、それでは私も少し寝ますね。」
「あぁ。」
「おやすみな、わぁ!」
立ち上がった彼女を胸に閉じ込める。
ふわりと優しい匂いが香る。
「しばらく、このままで居たい。」
「はぃ。」
二人はゆっくり、抱き合った。
朽木 百哉
「絳攸。」
「ん?な!何でここに居る!」
「へへへ〜。黎深さまが行って来いって。」
「はぁ?」
「絳攸が迷子になっているから、迎えに行って来いって言ったの。」
「迷子じゃない!」
彼の持っていた山積みの本が落ちる。
「そうなの?」
「当たり前だ!」
「そう?」
本を拾い、絳攸に渡すと絳攸はスタスタと歩き出す。
「この俺が迷子になるなどありえん!!」
「ふーん。・・・今さー何処に向かってるの?」
「府庫だ。」
「そっか。」
「そうだ。」
「でもさーここ真っ直ぐ行ったら吏部だよ?」
「!!!!!!」
「案内しよっか?」
「いらん!」
「このまま行って、黎深さまに遊ばれるよ?」
「・・・」
さっと青ざめる絳攸。
「・・・わかった。頼む。」
彼女のおかげで朝日が昇る前に府庫に到着した。
李 絳攸