別れてやる。今度こそぜーったい別れてやるー。
御家騒動
そういって彼女は、筆をとり、夫に一筆書き残すと家を飛び出した。
彼女の名は、。住まいは茶州。向かうところは紫州。
彼女が家を出て7日後。ようやく帰ってきた夫が置手紙を読んだ。
『実家に帰らせていただきます』
夫は慌てて、妻のあとを追う。
その頃、妻、は邵可邸にて優雅にお茶をしていた。
「秀麗ちゃんのお饅頭は本当に美味しいわね。」
「えぇ、勿論です。」
「静蘭、貴方相変わらず親馬鹿ね。」
「そんな無駄口をたたくなら帰れ。」
「否。」
「ふーいったい何があったんだ。あいつが浮気でもしたのか?」
「あら、それに関しては心配ないわ。」
「だろうな。」
また一つ溜息をつき、昔馴染みの彼女の顔を見る。
「私、あの人のなんなのかしら?」
「夫婦だろう。一応。」
「的確な答えをありがと。」
「何日だ。」
「一ヶ月半。」
「長いな。」
「長すぎよ。あの克洵様さえ仕事終わらせて、春姫様と過ごしているのよ!なのにあの馬鹿ときたら!!」
「あいつが文官なのが間違いだからな。」
「わかってるわよ。」
ぶすーっと机に倒れこむの頭を優しくなでる。
そんな静蘭の手は優しくって。
「あぁー静蘭のこと好きになればよかった。」
「断る。」
「うわっ、酷ーい。」
静蘭の手だとわかっているのに、あの人になでられているみたい。
そういえば、なんで私あいつの妻になんかなってるんだっけ?
・・・あぁ、そうだ。
英姫様と同じように閉じこもり、外部からの接触を断っていたとき突然あいつがやって来て・・・
「お!いたいた。」
「誰!」
「久しぶりだな〜。」
「えん、せい。」
「おう。迎えに来たぜ!」
「来るのが遅いわよ!」
そんな憎まれ口をたたいて。
「わりぃーわりぃー」
「心がこもってない!」
それでも、迎えに来てくれたことは嬉しくって。
「お前が好きだ。」
「は?」
突然のことで思考回路は動くことを止めた。
「反応薄いなー。一世一代の告白なのに。」
「…な、何言ってんのよ!」
動揺しているのが自分でもよくわかって、でも、なんだか悔しくって。
手に持っていた鉄扇を投げ、枕を投げ、花瓶を投げと手当たり次第に投げつける。
「イテテテテ。で?返事は?」
「…助けに来てくれたし、仕方ないわね。」
「なんかなー」
「なによ!」
「静蘭に負けず劣らず素直じゃないなーって」
「う、煩いわね!行くわよ。」
そう、それだけ。私より大きな手でぎゅっと抱きしめられて、…良かったなーあの頃は。
「好きよ。燕青。」
「そりゃー良かった。」
幻聴まで聞こえる。・・・幻聴?
ガバッと上半身を起こす私のみは寝台に転がっており、その横には燕青がニコニコと立っていた。
「・・・・・。」
「いやー久しぶりに帰ったらあの手紙だろ。」
「・・・・・。」
目の前で豪快に笑う男をキッと睨みつける。
「迎えに来るのが遅い。」
「これでも、頑張ったんだけど。」
「あと1日遅かったら、静蘭に乗り換えるつもりだったわ。」
「そりゃーよかった。間に合って。」
「ええ。ホントに。」
「で、その次の日に俺が迎えにきたらどうするわけ?」
「・・・静蘭には悪いけど、燕青と帰るわ。」
「じゃー帰るか。」
「…そうね。帰りましょう。」
寝台から立ち上がると、静蘭にお礼を言って、もちろん秀麗ちゃんや邵可様にもお礼を言って、私達は邵可邸を、貴陽を離れた。
*1000HITフリー夢。(嵐都炎夏)