あれ?
御家騒動から1ヶ月。
あの日から燕青はちゃんと10日に一度は帰宅するようになり、文も送ってくれる。
家出をしたかいがあった。
おかしい。
が、私は凄く悩んでいた。
確かこの前は・・・あれ?なかった。
これでも私は記憶力は良い方だ、間違いない。
私、私・・・
妊娠してる!!!
続・御家騒動
どうしよう。・・・・うん。行こう。
悩んでる暇はなく、私は一月前と同じように茶州を旅立った。
そう、またしても置手紙を残して。
『少し考えたいことがあります。家を出ますが気にしないで下さい。』
そうして、また彼女が家を出てしまった。
その夫、燕青が帰って来たのは妻が家を出て15日後の夜だった。
置手紙を見て、何事かと考える。
10日に1度は帰るようにしている。(時々遅れるが)
文も3日に1度は送っている。(1,2行だが)
髭も剃っている。(帰宅する時だけだが)
妻の差し入れも残したことない。(美味いからな)
・・・・・今のところ妻が家を出る理由は見つからない。
置手紙にも『気にしないで下さい。』と書いてあるので気にしなくてもいいんだろうけど。
家出したら行くところは決まって静蘭のところ。
親友とは言え、妻が自分以外の男のところへ行くのは快く思えなくて、休暇願いを叩きつけて返事を待たずに紫州へと旅立った。
「3ヶ月か・・・」
「なにがですか?」
「うわ!静蘭!びっくりしたー脅かさないでよ。」
突然背後から声を掛けられ肩をすくめる。
「あ、お茶持ってきてくれたんだ。」
「お嬢様がお持ち下さったのですが、が溜息ばかり吐いていると。」
「あ…近寄り難かった?」
「そうらしいです。」
「悪いことしちゃったなー急に押しかけたのに。」
「全くだ。今度はどうしたんだ。」
室の前から秀麗の気配が無くなったため、静蘭はいつもの口調に戻った。
「分かってるくせに!」
「それがどうした。」
「静蘭冷たーい。こっちは悩んでんのに。」
「あいつなら喜んでくれるだろう。猿みたいに。」
「…うん。そうね。きっと。」
そう、きっとあの人なら、燕青なら喜んでくれる。
「に、しても遅いわねー燕青。」
しんみりとした雰囲気を壊すように不満げに言う。
「、お前まさか!」
「あら?当たり前じゃない。私が子供を産むか産まないかで悩むと思って?」
「じゃー今回も」
「そーよ。これを見なさい!」
突き出されたのは燕青がに送った文の数々。
その内容というのは…
仕事が増えた。帰れそうにない。悪りい。
月が綺麗だったな。団子が食いたくなった。
借金が増えたみたいだ。利子は減った。
饅頭が食いたい。桃饅がいい。
つかれた。明日か明後日、5日後には帰る。
などなど、どこかの馬鹿殿の恋文と変わりない。
「詩文は苦手だからな。」
「突っ込みどころ違うから静蘭。まったく…。」
ブツブツと文句を言う。そして、キッと窓の方を見て一言。
「いつまで隠れてるつもり!」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・誰もいないのね。ふーんそぅ。静蘭、結婚しましょう。」
「あぁ」
「悪かった。この通り、それだけは止めてくれ。」
と静蘭の前に出てきたのは一匹の熊。いや、失礼。浪燕青。
見事なまでの土下座をしている。
「仕方ないわね。静蘭、ありがとう。」
「帰るのか。」
「えぇ。迎えも来たようだし。」
ウィンクをして、窓からヒョイと外に出る。
身重のくせに、何をしてるんだ。と思ったのは燕青も同じ。
慌てて飛び出し、妻を追いかける。
嵐が去った。
紅家の家人、静蘭は深く溜息を吐いた。
実に1ヶ月と5日ぶりの休息だった。
*4000HITフリー夢(嵐都炎夏)