日本 京都府
舞鶴市 倉梯町 3丁目26番地 二階の東側
・様
分厚く重い、黄色みがかった羊皮紙の封筒だ。宛名はエメラルド色のインクで書かれており、裏返してみれば紫の蝋で封印がしてあった。さらによく見るとそれは何かの紋章で真ん中に大きく"H"と書かれており、その周りをライオン、鷲、穴熊、蛇が取り囲んでいる。
切手も入っていないことからそのまま家のポストに投函されたのだろう。それにしても、いまどきこんな手の込んだ不幸の手紙?みたいなのを書くなんてよっぽど暇なのね。
封を切り中に入っている手紙を取り出し読んでみる。
ホグワーツ魔法魔術学校
校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級魔法使い、国際魔法使い連盟会長
親愛なる殿
このたびはホグワーツ魔法魔術学校にめでたく転学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。必要な教材のリストを同封いたします。
新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。
敬具
副校長 ミネルバ・マクゴナガル
そしてもう一通。
・殿
転学おめでとう。君をホグワーツに迎える準備は整えた。
使い魔のことも心配は要らないよ。2匹ともつれてくるといい。
詳しいことは君の親御さんに聞くといい。それでは、8月21日イギリスで会おう。
校長 アルバス・ダンブルドア
同封されていたのは、教材のリスト、なにかの同意書、そしてイギリス行きの航空チケット。
「ふーまったく。どっからつっこんだほがいいのかしら?」
とりあえずは、このチケットね。出航時刻が明日のAM9:45、今の時刻はPM10:00。出航まで約12時間。こっちの都合も考えて欲しいわね。兎に角、お父様とお母様は何か知ってるみたいだし。聞きに言ったほうがいいわね。
2階の東側にある自室を出ると両親がいるであろうリビングへと足を運んだ。
ガチャ
「いやだ、あなたったら〜もぅ・・・」
「そんなことないよ、君はいつだって僕の太陽だ」
「あなただってずっと私のナイトだわv」
二人がけのソファーの上でイチャついてる両親、反対側のソファーではいつものようにペットのとが寝そべっている。
はっきり言わせてもらう、私の両親は万年新婚夫婦だ。時間があればいつだって二人の世界。私ももも呆れて気にしないようにしている。よって、この両親に話しかけるのは大変なのだ。
「あーえー。ちょっとよろしいですか?お父様、お母様。」
「あら、いやだ。いつからいたの?」
「そうだぞ。覗き見は淑女のするべき行動ではないな。」
「ついさっき来たばかりですわ。それにお父様、リビングでイチャつかないで下さいますか。リビングは公共の場です。マナーはお守りになってください。」
「はははははっ。まいったね、一本取られてしまったよ。」
「それは良かったですわ。ところでお父様方はホグワーツ魔法魔術学校をご存知ですか?」
「あぁ。知ってるよ」
「当たり前じゃない。パパとはそこで出会ったんですもの。」
「君はどんな女子よりも可愛かったから競争率高かったんだぞー」
「パパも誰よりも格好いいから気が気じゃなかったわ。」
溜息をつく母の肩に父は手をかける。そして、母はその父の手を握り・・・
「いい加減にしてください。お父様もお母様も二人が相思相愛なのはわかりましたから。」
「相思相愛ですって」
「まさに私達のためにある言葉だね。」
二人の世界に入りそうなところで釘を刺す。先手必勝とはこのことだ。
「それで、ホグワーツ魔法魔術学校はなんですの?」
「魔法使いのための学校さ。」
「・・・はぁ?」
私の思考は停止した。そりゃ、もう、たっぷり5分間は。
そして出した答えが、【この親は暑さでやられてしまったらしい】と言ってもここはクーラーのきいている室内。室温も21℃と快適なはず。やっぱり、ボケ?どうしよ。お父様ったらまだ3●さいなのに…。
「本当よ、ちゃん。貴女がやと会話出来るのはその為なの。」
「・・・・・・へぇ。」
「で、どうするんだい。ホグワーツに行くかい?」
「え!行ってもいいの?」
「構わないよ。それにしても途中からとは・・・」
「逃げすぎたかしら?」
「まさか。の力を安定させるためだろ。」
「途中って・・・」
「あぁ、は5年生だよ。勉強も大丈夫さ。何てったって私とママの子なんだから。」
「そうね。あ!これを渡しておくわ。」
「なに、これ?」
手に握られさせられたのは地図の書いてある紙と銀色の鍵。
なになに?グリンゴッツ銀行?ダイアゴン横丁?イギリスにそんなところあったかしら?
「こんなこともあろうかと、コツコツ貯めておいたのよ。」
「へーところでお母様。一つ聞いても良いかしら?」
「いいわよ、なーに?」
にっこりと微笑む母。その横で同じようににっこりと微笑んでいる父。
・は日本に住んでいるものの父、母ともに生粋のイギリス人。よって私もイギリス人なのだが、1度たりともイギリスは勿論日本から出たことがない。
「私がイギリスに行きたいって行った時反対しましたわよね。」
「えぇ」
「それは、魔法使いだと言うことがバレてしまうからですか?」
「そうよ。」
「じゃー今回はこの手紙が届いたから良かったものの、こなかった場合にはなにも言わないつもりだったんですね。」
「そうね。」
「家では隠し事はナシのはずでしたよね。普通は教えるでしょう!心構えってのが必要なんですから!!」
「だって・・・」
愚図りだす母。涙をためて父を見る。
「ほらほら。駄目じゃないかママを泣かせちゃママも泣き止みなさい。ママに涙は似合わない。」
「・・・っあなた!」
抱き合う2人。・・・・・・やってられない。
「、。いらっしゃい。寝るわよ。
・・・・・お父様、お母様おやすみなさい。」
まだ抱き合いながらイチャついている親を見て呆れながら2階へと足を運ぶ。
一時、2人の世界から解放された母から放たれた痛恨の一撃。
「だって、隠してたほうがおもしろいでしょ?手紙が来なくてもちゃんの結婚式のスピーチで言うつもりだったのよ。それにしてもちゃんったら顔一つ変えないですもの、つまらないわ。」
立ち止まる私。心配そうに見上げるペット。
嗚呼そうだった。私の親はこういう人だったのよ・・・・・・。