転寝の日
「主上、起きて下さいませ。」
「んっ。しゅーれい。」
「秀麗様はいらっしゃいません。」
「しゅーれー。」
女人の国試受験案のため徹夜が続き、今日が四日目。
彩雲国国王、紫劉輝はと言うと、側近の者がちょっと目を離した好きに転寝に入っていた。
「起きろ!この馬鹿王!」
「まぁ、まぁ。絳攸もう少しいいじゃないか。」
絳攸の振り上げた拳を止めながら言う。
「そうですよ、李待郎。」
「。」
「主上はこのところ寝ても覚めても李侍郎に迫られていたみたいですし。」
「・・・。」
「迫られるって。絳攸、君そんな趣味があったのかい!」
「冗談じゃない!!」
ピキリと音を立てこめかみに青筋が走る。
「昨夜なんか、殺されるかと思った。って夜中に飛び起きたんですよ。」
「何でそんなことを知っているんだ。」
この主上付きのという女官は、昼間は主上とともにいることが多いが、夜になるとその姿を後宮から消すのだった。
「昨日は主上に頼まれまして、添い寝をさせていただきましたので。」
フフフと笑いながらさらりと問題発言。
「なに!!」
「凄いな。秀麗殿の次は殿か…んー羨ましいね。」
「常春!!なぜ貴様はいつもいつもそう。」
「李侍郎、声が大きいですよ。」
「もだ!何で断らない!」
「別に断る理由がありませんでしたし。」
「なにかあったらどうする!」
「何かあると思うのですか?」
うん。大変面白いことになっている。
一人、親友の様子を見て楽しそうに笑った。
絳攸は分かっていないのだろう。女嫌いだといっているくせに、殿に関しては別だと言うことを。
秀麗殿のことは弟子のように思っているらしいが、殿は違う。
弟子でも、気の合う女官でもなく女として見ている。
いつだって眼で追っているくせに、自分の気持ちには気付いていない。
なんというか、一人で空回りしている。
「んっ。・・・」
むくりと主上が起き上がった。
目の前にいる人物をみると、どんどん青ざめていく。
「主上、おはようございます。」
「こ、絳攸。…すまない。」
「ほら、李侍郎。主上を苛めないで下さいませ。」
「苛めてない!」
「はいはい。主上、よい夢が見れたようですね。」
「ん、そうなのだ!しゅ」
劉輝の口元にの手が伸び、閉じられる。
そのままふわりと微笑んで言った。
「よい夢は心の中に。」
「そ、そうだったのだ!」
慌てて言葉を飲み込む劉輝をクスクスと笑いながらお茶の準備をする。
「!茶は後だ!」
「眠気覚ましのお茶です。また、途中で寝られては困るのでしょう?」
結局、のいいように言い包められ、お茶の時間となった。
勝手に居眠りをしたことを怒っているのか、
それとも単なる嫉妬のかはわからないが、劉輝はその後鬼のような形相の絳攸にビシビシと指導を受けることとなった。