ありがとう。
「リオウ。王様ってどんな人なの?」
「・・・変なやつだよ。」
「ふーん。でも、リオウは嫌いじゃないのね。」
「何でそう思うんだ?」
「だって、最近楽しそうだから。」
自覚していなかっただけで、前の自分に比べると自ら話すようになったし、外出することもしばしば。
「いいな。」
ぽつりと呟かれた言葉。
従兄弟にあたる彼女を見るとバツの悪そうな顔で笑った。
「ないしょ、だよ。最近、お母様の機嫌が悪くて・・・。」
己の唇に人差し指を立てて内緒の仕草をする。
母親である瑠花から酷い扱いを受けているのだろう、手首は細くやせ細り、白い肌は青白くなっていた。
「。」
「なぁに?」
「ちゃんとご飯食べてるか?」
「え、勿論だよ!それより、叔父様は?」
「ん。あいかわらず。」
「そっか。」
はそっと目を伏せた。
璃桜は相変わらず薔薇姫に夢中で姉の瑠花のことなんて無視しているし、これからも瑠花を気にかけることはなさそうだった。
ならば、瑠花の怒りは収まらず娘のに対する仕打ちはこれからも続くのであろう。
「一緒に行くか?」
不思議とそんな言葉が出た。何故だか分からないけれど。
は意味がわからないのだろう、?を頭にたくさんとばしている。
「一緒に王宮に行くか?」
「いいの?」
「俺がいなくなったらお前死んじゃいそうだし。」
「うん。」
「親父に言えば伯母さんも何も言わないだろうし。」
「うん。・・・ありがとう。」
親父に言えば良いとも悪いとも言わず、あぁ。と、頷いただけだった。
しかし、瑠花を納得させるには十分だった。
かくして、二人は王宮、仙洞省に住まうことになった。
始めて外に出たは予想していたとおり寝込んでしまったが、瑠花による虐待もなくなったため、肌の色は元の白雪に痩せこけていた体はふっくらと丸み帯びてきた。
「リオウ。」
「なんだ。」
「ありがとう。連れてきてくれて。」
「俺がしたかったんだ。」
「うん。それでも、ありがとう。」
「あぁ。」
まだ体調が万全とはいえないため寝台から抜け出せないでいるの頭をなでる。
「リオウ、王様に会ってみたいわ。」
「そうだな。」
「私とも、仲良くしてくださるかしら?」
「あぁ、あいつならするだろう。」
「そっか。」
「何が可笑しいんだ。」
「ううん。幸せだなーって。」
「そうか。」
「うん。・・・っふぁ〜。」
小さな欠伸。話しすぎて体に負荷が掛かったのだろう。
「おやすみ、。」
「おやすみ、リオウ。」
まどろみに落ちる少し前、がぽつりと呟いた言葉。
リオウにと届いたのかは分からない。
ありがとう、大好きだよ。リオウ。