「主、女性官吏が誕生したそうだ。」
「それも、探花及第ですって!」
「どうしたの?急に二人して。」
「様はお受けにならないのですか?」
「国試をかい?ふふふ、それは無理だよ。後見人がいないからね。」
「そんな・・・。」
「私は気長に待つよ。なんなら、その女性官吏でも見に行こうか?」
「行きますわ!」
「主が行くのならかまわん。興味もある。」
「うん。なら行こう。」
3つの人影がゆらりと紫州を目指す。
我が名背負いし者へ
幾日かたったある日、貴陽に入るすこし前。
は奇抜な格好で笛を吹いているの男に会った。
「すみません。お兄さん、貴陽まで後どれくらいかしら?」
「なに?貴陽に行くのか!」
「えぇ。」
「風流でない。止めた方がいい。」
「でも、貴陽でないと女性官吏さんにお会いできないでしょう?」
「心の友其の一に!」
「え、えぇ(心の友?なにそれ。)会えませんかねーやっぱり。あ、それより先ほどの笛は少し抑えたかんじがいいと思いますよ。」
「む。そうか。この笛のよさがわかるのだな!」
「はい。悲しいけどそれはいい曲です。」
「うむ、そなたは楽の友其の一だ。」
「・・・ありがとうございます。」
「これを王宮にもっていくと良い。」
渡されたのは木簡に手紙。
が受け取るのを見届けると、頭に羽根をはやした男はまた笛を吹きながら歩き出して行った。
「・・・なんだったのかしら。」
呆気にとられ手に持っている木簡と手紙を懐に入れた。
とにかく、王宮に行ったほうがいいんだよね。
男がいなくなると同時に2つの影が現れる。そしてに近づく。
「主、行くのか?」
「ん。あぁ。さっ日の暮れる前に進もうか。」
そしてまた、3つの影は歩み始めた。
が貴陽に着いたのは鳥男と会って二日後のことだった。
日も高かったため、そのままの足取りで王宮へと進む。
確か、ここら辺と昔の記憶と照らし合わせながら歩くと憲兵らしい人影が。
「あの、これを渡されたのですが。」
あの鳥男に渡された木簡と手紙を渡す。
するとその木簡を見て顔色が変わる。手紙の方は2種類あったらしくその1つを読んだ憲兵の態度が変わった。
「少しお待ちください。」
そういって男は消え、次に現れたのは武官らしくそれでいて女慣れしていそうな顔の男だった。
「藍将軍、こちらの方がこの木簡と手紙を。」
「わかった。君は仕事に戻りなさい。・・・貴女はこちらへ。」
「・・・・・」
すっと手を取られ、腰に手を回され、進行方向が固定される。
やっぱりこの男、女慣れしてる。と改めて確信すると共に自分は一体何処に向かっているのだろうと不安になる。
「あの、藍将軍殿?」
「あぁ、すみません。」
腰に回されたと手が離れ、は楸瑛と向かい合う。
「折角訪ねてくれたのだけど秀麗殿はもう貴陽にはいないのだよ。」
「秀麗殿?」
「ん?君は秀麗殿に会いに来たのではなかったのかい?」
「女性官吏さん。つまり心の友其の一さんに会いにきたのですが…」
「あぁ、その女性官吏が秀麗殿だよ。」
「そうなんですか。残念ですね。」
ここまで来たのは無駄足だったかと苦笑していると自分に向けられている視線に気づく。
「あの、なにか?」
「いえ、あまりにも美しいので見とれてしまったようです。」
「そんな、…あの私はこれで。」
「あぁ、そうですね。」
その回廊から元の場所まで質問されながら歩く。
そして王宮の外まで並んで歩くと軽く会釈をして街へと歩き出した。
質問されること1つ1つが鋭く、内心冷や冷やしていた。
普通の娘が一体どこまでの教養があるのか知らないため問われたことは3問に1つ答えを出した。
もう会うことがないみたいだし、まっいっかと考えることをやめ。
宿を探しに待ちに繰り出した。