「あれから八年か…。」
「何をしているのです京。一人でフラフラといなくなると迷子になりますわよ。」
「お前が、だろ?」
「なんですって!まったく、人が心配すれば…」
「心配してたのか。」
様のことですわ!」
「そうか…。主人は元気だろうか。」
「元気ですわよ、私が。」
「悪い。そう言うつもりじゃなかったんだ。」
「京に謝られると変な感じですわ。」
「無理をしなければいいがな。」
「そうですわね。・・・白州に行って、お酒を買って帰りましょうよ。」
「あの男、信用できるか?」
「楸瑛様のことなら大丈夫ですわ。」
「なんで言い切れるんだ。」
「女の勘は鋭いんですわ。」
「当てにならないな。」
「なんですって!!」
「ハハハ。怒んな、怒んな。」
「怒りたくもなります!」
「白州に行くんだろ?」
「うー(話を逸らしましたわね)・・・行きますわよ京。」
「へいへい。」

柚子はツンとそっぽを向き先に行ってしまう。
後をどうやって機嫌を取ろうかと考えている京が行く。
目指すは、白州。



その後、の元に2羽の鳥が飛んできた。


主人。あー俺だ。
こっちは変わりない、主人はどうだ?
柚子が消えていないから大丈夫だとは思うが、あまり無茶はするなよ。
今は黒州にいる。僅かだが奴の気配が残っていた。
安心しろ、こっちには柚子がいるからな、追いはしない。
今はまだ奴も仕掛けては来ないと思うが、用心しろよ。
犀刃を手放すな。
・・・それだけだ。俺らは主人の国武試終了日には帰ってくる予定だ。
じゃーな。


ボッ。バサバサ、バサ。
火達磨になって落ちていった鳥を見ると、は満足そうに頷いた。
今見ると鳥が落ちたところには羽一つなく、紙が一枚落ちているだけだった。
キーッともう1羽の鳥が鳴いた。

「はいはい。それじゃ、話してくれる?」


キーキーッ、キーキッ
様。お元気でしょうか?
私たちは今、黒州にいます。次は白州へ行くつもりですわ。
勿論、芽炎白酒は買って参りますわね。
帰ったら、お酒を飲みながら旅のお話をしましょう。
京ったら相変わらずですの。
何も言わずにフラフラと出かけてしまうので探すのが大変ですのよ。
白州の次は、まだ決めていないのですけど、多分私たちが帰るのは国武試最終日だと思います。
だから、頑張ってくださいませ。男なんて蹴落としてしまえばいいのですわ。
・・・あ、あと。言おうか迷ったのですが。
芳家の当主がなくなりもう8年が経ちました。
明童神の名を継ぐものがいなくなり、四王神のものが眠りについています。
もし、もしも、あの人が力を持ってしまったら・・・
分かってはいるのです。
様にその気がない事ぐらい。でも、私はあの人には・・・
すみません。少し不安になったものですから。
では、また連絡させていただきます。失礼致します。


バチャン。
急に水になったため、の着物の袖が少し濡れてしまった。

「まったく、二人と来たら折角の休暇なんだからゆっくりすればいいのに。」

私は、そんなに不甲斐ないかしら?
・・・8年たったのか。やっぱり、あの方も生きているのね。
私はどうすればいいのですか?お祖父様…。