彼女との出会いは、桜の咲き乱れる日だった。
彼女が自分の妻になったのは薄紅色の薔薇が咲いた日だった。
彼女が笑ってくれたのは白牡丹の咲く時期だった。
彼女と別れたのは寒椿がポトリと落ちた日だった。
三年待っても君は来ず
たった一年だった。
それでも、桜や薔薇、白牡丹に寒椿を見ると思い出すのは彼女のことだった。
一年、二年そうして十数年のときが流れ、
あの家は没落したらしい、娘は打ち首にされたようだ。
そんな噂を聞いても、所詮噂は噂だと思っている自分がいた。
どんなに探しても彼女の行方はわからなくて、いつしか忘れようとしていた。
お嬢様の付き添いで、もう訪れることのないと思っていた後宮に足を運ぶことになった。
少しだけ、もしかしたらと言う期待を胸に後宮を訪れたものの、やはり現実は厳しかった。
ぐるりと庭を回れば桜も薔薇も白牡丹も寒椿もあるというのに、
私のそばには彼女がいなかった。
「あらたまの年の三年を待ちわびてただ今宵こそ新枕すれ」
一人思い出に浸っていると風と共に歌が聞こえた。
消えそうな細い声、けれども優しさのある暖かい声。
聞き間違えるはずがなかった。彼女の声だ。
「!!」
「・・・・。なんでしょうか?静苑さま。」
そこには愛しい彼女の姿。
あの頃と同じ優しい笑顔、でも、女性特有の凛とした空気。
「・・・」
静蘭が一歩進めば、も一歩進む。
そうして、二人の距離が触れるか触れないかのところで止まる。
「何を哀しそうにしているんですか?」
不意に頬に当てられた手を掴み、引き寄せる。
「静苑さま。お放し下さいませ。」
「断る。」
「私は、」
「あらたまの年の三年を待ちわびてただ今宵こそ新枕すれ、か。」
「・・・そうです。」
「構わない。」
「私は、私は静苑さまに寵愛を受ける資格など御座いません。」
「必要ない。静苑はもう居ない、私は静蘭だ。」
「せい、らん様。」
「あぁ、愛している。。」
「私も愛しています。」
その後、後宮には騒動が起き、お嬢様が後宮を退く日になった。
桜の散り行くその日に彼女は、は私の隣で微笑んだ。
「ところで、一つ聞きたいことがある。」
「はい。なんでしょうか?」
「夜を共にしたのは、その、何人ほどだ?」
「一人です。」
「一人か。」
「あの、その方を責めにならないで下さいませ。私が無理を言って抱い下さったのですから。」
「…一応、名前を聞いても宜しいですか?」
「えっと・・・。」
その後、しばらくの間、某将軍の姿が見られなかったとか・・・。
《解説》
あらたまの年の三年(ミトセ)を待ちわびて
ただ今宵(コヨヒ)こそ新枕(ニイマクラ)すれ
三年もの間、辛い思いで貴方を待っていましたが、
ちょうど今夜他の方と初めての夜を共にするのです。
*2000HITフリー夢(嵐都炎夏)