● 少女という言葉を盾にはしない。
「やっほーい!元気ですか?」
「おう。」
「流石、武ね~。」
「なんだそれ。」
「武はいっつも元気ってことよ。」
「まぁな。それより、どうした?」
彼がそう聞くのも無理はないだろう。
いつもならツナや十代目ラブの犬さんと一緒に帰宅しているのに、今日はグラウンドに顔を出したのだ。
「へへへ、武の部活姿を見に来たのよ。」
「はははっ、それなら格好悪いとこ見せられねーな。」
「期待してますよ。」
グッと親指を立てて突き出せば笑顔で返してくれる。
練習が始まったようだ。
見ている私はワクワク、そして野球をしている彼もワクワクしているようだ。
漫画で見るのは戦いの方が多かったけれど、こんな彼も好きだ。
カキーン。綺麗な音を響かせボールはどんどん遠くに。遠くに。
「すごっ!」
「だろ?」
「いいなー私もあんな風に打ってみたい!」
運動音痴ではないがあんな遠くまで打ったことがない。正直、羨ましい。
「やってみるか?」
「え!いいの!」
「おう、あぁでも制服じゃーな…」
「ご安心を!体育着着用済みです!」
スカートを持ち上げ下に穿いている体育着を見せる。
すると武が珍しく慌てている。
「秋山!お前女だろ!そんなことするんじゃないぞ。」
「へへへ、ゴメンゴメン。」
謝りながら、上は制服、下は体育着に身を包んだまま武のもとへ行く。
ほらっと差し出されたバットを握り、構える。
「お!なかなか様になってるのな。」
「ホント!よし!武って投げれるの?」
「ん?あぁ、まぁな。」
「んじゃ、武!かかって来なさい!」
ビシッとバットの先を武に向ける。
その他の野球部員、そして武のファンであろう女の子たちが私のことを馬鹿な女としてみているであろう。
それなのに、武は真剣で。一切手抜きをしない視線に私は心が躍った。
「武、勝負!!」
投げられた白球に向かって渾身の一打を繰り出した。
カキーン!綺麗な音をならしボールはドンドン遠くへ。
「おー凄ぇな。流石、秋山なのな。」
「あったりまえでしょ!だって戦う少女だもの。」
そんな私の言葉に武はニコニコとして答えた。
「だから好きなんだよ。」
…この天然!不覚にも顔を赤らめてしまったことをここに記す。
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