お前は…そういう奴だよな
「ねー終わりにしましょうか。」
ベッドの上で抱きしめられている私はポツリと呟いた。
私と彼しかいない部屋にその言葉は響き渡る。
「どういうことだ。」
彼が怒っているのが背中越しに伝わる。
「そのままの意味よ。」
私は動かず冷たく言い放つ。
「理由は。」
そんな私の行動を冗談と取ったのか、彼は少し余裕のある口調で言った。
「考えたら分かることよ。」
体制を変えずに言う。
すると今度は私が本気だと言うことがわかったのだろう。
イラつき始めている。
「俺は別れないぞ。」
「勝手にドウゾ。私は終わりにするわ。」
こちらは余裕を見せ、わざと相手を煽る。
「そこまで言う理由を聞かせろ。」
「分からないの?」
本当に分からないのであろう。私を抱きしめていた手はとっくに外され、今はナイトテーブルを叩いている。
彼はこの関係がいつまでも続くと思っていたのだろうか。
「景吾が気付こうとしていないだけよ。」
そう、きっと彼も気付いている。
ただ、知らないふりをしていれば私がココに残るとでも思っているだけ。
「私、教師をやめるの。付き合っている人がいてね。」
「結婚か・・・。」
そう。私は景吾以外にも付き合っている人が居る。と、言っても1人だけど。
その人との婚約が決まり、1ヶ月後には式を挙げる。
「そうよ。だから遊びはお終い。」
「遊びだったのか。」
「そうよ。子供を本気に出来るわけないじゃない。」
私は立ち上がり衣服を整える。本当はシャワーでも浴びていきたかったけれど、そんな事したら折角の決断が鈍りそうで諦める。
フロントに掛け、下にタクシーを呼ばせる。
もう一度、ベッドの上で呆然としている景吾を一瞥するとそのまま部屋を出た。
「お前は…そういう奴だよな。」
最後に景吾が呟いた言葉。
そうよ、私はそんな奴よ。って自嘲気味に笑ってやった。
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お題:『お前ってそういう奴だよな』
テニプリ 跡部 景吾