ゆっくりと…
「ふぅ。これで綺麗になったわね。」
桶と雑巾を持ちただっ広い屋敷の一部屋、一部屋を片付けていく。
妹の秀麗は茶州へ州牧として旅立ち、家人の静蘭も共に旅立った。
父もまだ仕事中だろう。
そんな風に考えるとこの広い屋敷に1人ぽつりと残され、寂しくなった。
ハッと、意気消沈している自分に気付き頭をふり、気分転換にでも庭の桜を見に行こうと外に出ると、そこには良く知った人物が。
「絳攸様?うちになにか御用ですか?」
「うわ!!」
「はい。いかがなさったんですか?」
「い、いや。桜をだな・・・」
「あぁ。絳攸様も桜を見に来たのですね。私もちょうど桜を見ようと思ってたのですよ。」
まだ蕾もない桜を見上げる。
もちろん、には迷子になってここまで来たのが分かっていたのだが同意する。
絳攸の書簡に目を落すと絳攸も気付いたらしく、慌てて隠そうとする。
「桜を見に来てくださったのは嬉しいのですが、お仕事の途中に抜け出してはいけませんよ。」
「え、あぁ。すまん。」
「じゃー少し待っていて下さいね。」
するとは一度屋敷に入り、次出てきた時には重箱を持っていた。
「王宮に戻られるんですよね?私もご一緒しても宜しいでしょうか?」
「あぁ、勿論だ。しかし、は何故。」
「黎深叔父上が饅頭が食べたいと仰っておりましたので。」
あの人は。そんなことを言っていたのか。
疑問が解決したというのに、なぜか心は淋しくなる。
「本音を言うと、絳攸様と一緒に行きたいからなんですけどね。」
照れくさそうに微笑んだ彼女を見て、自分は彼女のことが好きなのだと気付く。
「絳攸様?」
「、好きだ。」
・・・。
二人は互いに見つめあい沈黙しあう。
しまった!どうしようかと思うけれどそんな絳攸を尻目にの顔は真っ赤になり泣いていた。
ポタリ。
ツーっと頬を流れる。
ポタリ。
「おぉい。どうした。すまん。忘れてくれ。」
「好きです。私もずっとお慕いしておりました。」
「えっ・・・あの。その。好きだ。誰よりも。」
「私も、です。」
まだ蕾もない桜の木の下。
ぎゅっと二人は寄り添った。
――その後――
「お父様、黎深叔父上。」
「なんだい?」
「、私に出来ることなら何でも言ってくれ!」
身を乗り出してくる黎深。
「そ、その・・・」
「邵可様!を下さい。」
「ならん!!」
答えたのは邵可ではなく、黎深。
「黎深。」
「兄上・・・しかし。」
邵可に咎められしょんぼりと肩を落す黎深。
それでもしっかりと絳攸を睨んでいて。
・・・結婚まではまだまだ先のようだ。